久しぶりに映画の終わりの「FIN」を見た、最近は特撮などでクレジットが延々と続き何時席を立ったらいいのか悩んでしまう、昔のように「END」「おわり」「終」で締めて欲しい、「完」の字を見るともう後はないでえ〜とハッキリ認識できるのだ
肝腎の映画の方だがすっかりストーリーを忘れていて始めて見たような感覚で得した気分、先月に板妻の無声映画(11/17)の話を書いたが今日は不朽の名作「望郷」
場所は大阪西区にある異色の映画館「シネ・ヌーボ」の上にある、シネ・ヌーヴォXで30人ほどの小さなスペース、毎月1回映画評論家の浅野潜さんの解説付きで映画の面白さが倍加する、70年前の映画とは思えないほど新鮮でよくできている、要約すればアルジェリアのカスバに潜むパリから逃れてきた凶悪犯が女に最後に裏切られてしまうお話
ふと映画を見ながら「カスバの女」という歌を思い出した、調べたら昭和30年で何でこんな歌覚えているのだろう
涙じゃないのよ 浮気な雨に
ちょっぴりこの頬 濡らしただけさ
ここは地の果て アルジェリヤ
どうせカスバの 夜に咲く
酒場の女の うす情け
なんでまた日本と殆ど縁のないカスバが歌われヒットしたのか不思議でならない、きっとこの望郷や外人部隊などが影響しているのだろう
映画の後で思い出したのが大昔に全国制覇したラジオドラマの「君の名は」なのだが、これも私には無縁のドラマだったのになあ、でも調べたら望郷とは何の関係もありませんでした、
「忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ」
私の頭の空っぽの箱の内側にカビみたいに張り付いていたに違いない
昔の洋画は原題を無視してオリジナルのタイトルを付けている、この望郷も「ペペルモコ」でどの映画も邦題を付けられていたのだ、これは映画だけに限ったことではないのだが
浅野さんの解説によるとリアリズム映画の基礎を作ったと言われる監督のジュリアン・ディヴィヴィビェは「望郷」「舞踏会の手帖」など名作を作った後ハリウッドに渡るが泣かず飛ばずだったらしい、また主演女優の女性は出演がこの映画1本、大ヒットしたのに何ででしょうね、そう言えばアランドロン代表作「太陽が一杯」のマリー・ラフォレも少ししか出てませんなあ
左の鉄条門のジャン・ギャバンは望郷の有名なラストシーンである、船着き場で手錠を掛けられた主人公ぺぺ、出航する客船のデッキにパリへ帰るガビイの姿を見つける、大声で「ガビイ〜!」と叫ぶがむなしくも汽笛でかき消され彼女には聞こえない、去っていく彼女、手錠のまま隠していたナイフを取り出し腹に突き立て崩れ落ちる、ぺぺを裏切ったカスバの女イネスが泣いて屍にすがる
映画の後はお蕎麦屋さんで飲み会、良い映画はいつまでたっても良いですなあ〜
原題を直訳すると「楽園(エデンの園)の子どもたち」
でもフランス語には paradise=天井桟敷 の俗語があるんですよね。座布団1枚!