昨年から続いている耳鳴りが一瞬にしてかき消される、木の真下に立つと360度セミの声が体を包む、以前一人でカンカン照りの桃山御陵を歩いたときに行けども行けどもセミの声に包まれ音の方向感覚が完全になくなった記憶がある
そう言えば私の生まれ故郷にある伊勢神宮でも同じ経験をした、遠くから蝉の鳴き声が近づきあっと言う瞬間体中を包む、じっとしていると突然静寂がおとずれ暫くするとまた別の方角から蝉の鳴き声が近づき私の廻りの宇宙がぐるぐると回り始め一瞬の浮遊感
公園のセミは以前のように色々な鳴き声を聞かなくなった、今はほとんどがクマゼミで「シュワシュワシュワ」と鳴き続ける、アブラゼミもほとんど聞かなってしまい、ましてやニイニイゼミや夏の終わりを告げるヒグラシはほとんど聞かない、しかし少し山にはいるとミンミンゼミがうるさいほどの鳴き声で迎えてくれる
今朝のこと誰もいないグランドをショルダーをたすき掛けにしたサラリーマンが斜めによぎっている、ふと立ち止まり天を仰ぎ何を思ったのかサードベース側に歩いていく、腰をかがめ手を膝に当て守備体制に入る、後を振り返り見方の守備位置を確認、突然2,3歩前にはし出すと手を地面すれすれに差し出し走りながらミスター宜しくファーストへ送球、軽くガッツポーズ、くるりと振り替えるとグランドに入ってきたときと同じようにもう一方の出口へ向かってすたすたと歩き出した
セミの音が遠くから追っかけてくる、私の誕生日に告別式とは皮肉なもんだ、これから私は毎年彼の思い出を引きずっていくのか